相続や手続きが気になる?事実婚をする前に知っておくべきこと

「結婚はしたいけど、婚姻届を出すのはちょっと…」
そんな思いから、事実婚という形を選ぶカップルが増えています。夫婦別姓の維持や自由なパートナーシップを重視する現代において、事実婚は魅力的な選択肢の一つです。しかし、見落とされがちなのが事実婚のデメリットです。
たとえば、相続権がない、子どもの法的地位が不安定になる、社会的な認知が得にくいなど、後悔につながる可能性がある課題も多く存在します。本記事では、事実婚の定義から実際に起こり得るトラブル、そしてその対策までを網羅的に解説。後悔しないために、事実婚のデメリットをしっかり理解してから選択しましょう。
事実婚とは?基本的な定義と特徴
事実婚の定義と法律婚との違い
事実婚とは、婚姻届を提出していないものの、実質的には夫婦として生活を共にしている状態を指します。法律婚とは異なり、法的には婚姻関係とみなされませんが、当事者間で夫婦関係を築く合意があることが特徴です。法律婚では婚姻届を提出することで夫婦の関係が公式に認められる一方、事実婚の場合は法律上の届出を行わない自由な形を選択するという違いがあります。また、扶養義務や共同生活義務といった法的義務については、事実婚でも同様の責任を伴うと解釈されることが多いです。
内縁関係や同棲との違い
事実婚は「内縁」とも呼ばれることがあり、内縁関係とは婚姻の意思を持ちながらも法律婚をしていない状態を指します。一方で、同棲は主に男女が一緒に生活しているだけの状態であり、夫婦関係を目指そうという明確な合意がない場合が多くあります。この合意の有無は、事実婚と単なる同棲を分ける重要なポイントです。また、事実婚の証明には共同生活の実態を示す住民票の記載や契約書が使われることがあるため、同棲との認識が誤解されないよう注意が必要です。
事実婚が選ばれる理由と背景
事実婚が注目される背景には、社会の多様性の尊重や女性の社会進出の影響があります。特に、夫婦別姓を希望する人々にとって、事実婚は重要な選択肢となっています。法律婚では姓の変更が原則として必要ですが、事実婚であれば各自が自分の姓を維持することが可能です。また、法的手続きに縛られず、柔軟な生活や男女平等な関係を築きたいという理由から事実婚を選ぶケースも増えています。しかし一方で、事実婚には相続権がないというデメリットもあり、この点を十分に理解しながら選択することが必要です。
事実婚のメリット:新しい夫婦関係の形
夫婦別姓を選択できる自由
事実婚の大きな魅力の一つは、夫婦別姓を選択できることです。日本の法律婚では、夫婦はどちらかの姓を選択しなければならず、特に女性が改姓する場合が多いです。しかし、事実婚の場合は婚姻届を提出しないため、パートナーそれぞれが現在の姓を継続して使用することが可能です。これにより、これまでの仕事や社会的な繋がりを維持できるというメリットがあります。女性の社会進出が進む中で、多くの人が仕事やキャリア形成を重視しています。そのため、姓を変えずに結婚生活を送れる事実婚が注目されています。
税制や公的制度の活用の仕方
事実婚でも、条件を満たせば法律婚と同様に税制や公的制度を活用することが可能です。例えば、住民票に「未届の妻」「未届の夫」として記載してもらうことで、一定の公的制度が利用できる場合があります。健康保険では、書類で夫婦関係を証明すれば被扶養者として認められる可能性があります。また、最近ではパートナーシップ制度を導入する自治体も増え、事実婚カップルに対して支援が広がりつつあります。一方で、税制上の優遇措置や特定の公的手続きが法律婚に比べて受けられない場合もあり、メリットとデメリットを事前に理解しておくことが重要です。
婚姻届を出さないことで得られる柔軟性
事実婚には、婚姻届を提出しないことで得られる自由があります。夫婦が法律に縛られず、自分たちの価値観やライフスタイルに合わせた柔軟な生活を送ることができる点が魅力です。例えば、結婚生活における義務感や形式的な家族関係を避け、自然なパートナーシップを大切にできるという特徴があります。また、事実婚関係を解消しても戸籍上に婚姻履歴が残らないため、新しい生活を始めやすい側面も挙げられます。このように、自由な関係性を求める人々にとって事実婚は魅力的な選択肢となっています。
事実婚のデメリット:知っておきたい課題と注意点
相続権が発生しない問題
事実婚の最大のデメリットのひとつは、相続権が発生しない点です。法律婚の場合、配偶者には法律で定められた相続権がありますが、事実婚ではその権利が認められません。そのため、パートナーが先立つことがあった場合、財産を受け取るためには遺言書を作成しておく必要があります。遺言書の作成を怠ると、パートナーの家族が相続権を優先する可能性があり、トラブルに発展してしまうこともあります。こうしたリスクを避けるためにも、事前に相続対策をしっかりと行うことが重要です。
子どもの法的地位と懸念点
事実婚では、子どもの法的地位にも考慮が必要です。法律婚の場合、子どもは「嫡出子」として扱われますが、事実婚の下で生まれた子どもは、一部の法律的な状況では「非嫡出子」となる可能性があります。このような場合、父親が認知しなければ、子どもは父親から法律上の権利を得ることが難しくなります。また、相続においても影響が生じる可能性があるため、必要に応じて認知手続きを行うことや、法的なサポートを検討することが求められます。
社会的な認知や誤解の問題
事実婚のもうひとつの課題は、周囲の人々や社会における認知の不足や誤解に直面する可能性があることです。日本では、法律婚が一般的であるため、事実婚という選択を理解してもらうことが難しい場合があります。例えば、病院での緊急事態において、パートナーとしての立場が認められにくいケースや、職場で家族手当や福利厚生が適用されない場合もあります。そのため、事実婚であることを証明するための書類や制度を活用し、社会的な誤解や偏見に対処していく努力が必要です。
事実婚で必要な手続きと対策
婚姻関係の証明書類や契約の準備
事実婚を選択した場合、法律婚のような戸籍上の関係が存在しないため、夫婦関係を証明するための書類や契約の準備が重要となります。たとえば、住民票に「未届の妻(夫)」と記載してもらうことで、自治体によっては夫婦関係が証明されやすくなります。また、賃貸契約や保険の手続きなどでは、婚姻関係を示す契約書や合意書を作成しておくとスムーズに進む場合があります。このような準備が不足していると、生活の中でさまざまな手続きがスムーズに進まず、事実婚のデメリットを実感する場面が増えるかもしれません。
遺言書の作成や相続対策
事実婚の大きな課題の一つが、法的には相続権が発生しないことです。法律婚の場合、配偶者には相続権があり、特別な対策をしなくても財産を受け継ぐことが可能です。しかし、事実婚ではそのような権利がなく、何も対策をしないと相手が死亡した際に財産が他の親族に渡ってしまう可能性があります。この問題を防ぐためには、遺言書を作成しておくことが必須です。また、生前贈与を計画的に行ったり、相続税について専門家に相談したりすることも有効な対策となります。
公正証書での取り決めの重要性
事実婚におけるもう一つの重要なポイントは、法的な取り決めを公正証書の形で残しておくことです。たとえば、財産分与や生活費の負担割合、万が一別れる場合の取り決めなどをあらかじめ明確にしておくことで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。公正証書は公証役場で作成される正式な書類で、法的な効力を持つため、必要に応じて法的アドバイスを受けながら進めると安心です。このような取り決めを行うことで、事実婚ならではの柔軟性を保ちながらも、トラブルが起きた際のリスクを減らすことができます。
事実婚を始める前に考えるべきこと
事実婚についてパートナーと話し合うポイント
事実婚を始めるにあたって、まず大切なのはパートナーとの十分な話し合いです。事実婚は、婚姻届を出さずに夫婦同様の生活を送る形態ですが、その自由さゆえにトラブルが生じる可能性もあります。どのように共同生活を送るのか、家計の管理や子どもの教育方針など、具体的な事柄について話し合いましょう。また、法律婚と異なり、相続権や税制上の優遇措置がないなどのデメリットが伴うため、これらについて互いが納得できる解決策を見つけておくことが重要です。
法律婚との違いを再確認しよう
事実婚を選ぶ前に、法律婚との違いを再確認しておくことも必要です。法律婚では、夫婦は戸籍に記載され法的保護を受けられるのに対し、事実婚ではその保護が限定的です。たとえば、法律婚では相続権が自動的に発生しますが、事実婚では遺言書を作成しないとパートナーに資産を引き継ぐことができません。また、医療や介護の場面で「家族」として扱われず、手続きに不便が生じることもあります。これらの違いを踏まえ、自分たちの生活や価値観に合った選択をすることが大事です。
将来を見据えたライフプランの立て方
将来を見据えたライフプランを立てることで、事実婚の不安を軽減することができます。特に、相続や老後の生活を見据えた準備は欠かせません。事実婚では相続権が認められないため、遺言書の作成や、保険の受取人設定などの具体的な対策を検討しましょう。また、万が一事実婚を解消することになった場合、財産分与や退職金の取り決めについても事前に合意しておくとスムーズです。さらに、子どもが生まれる場合を想定し、教育費や扶養に関する考え方も共有しておくと安心です。
【まとめ】
事実婚は、現代的で柔軟な夫婦の形として注目を集める一方で、法的・社会的にはさまざまな制約やリスクを抱えています。特に、相続権の不在や子どもの法的地位の不確実性、社会的認知の壁といった事実婚のデメリットは見逃せないポイントです。
これらの問題に対応するには、遺言書の作成や契約書の整備、パートナーとの十分な話し合いが不可欠です。また、将来のトラブルを未然に防ぐためには、専門家の助言を受けながら、法的な準備を進めることも重要でしょう。
事実婚を選ぶ自由は尊重されるべきですが、その裏に潜むリスクとどう向き合うかが、長く安心して暮らすための鍵となります。事実婚のメリットだけでなく、デメリットも正しく知った上で、自分たちにとって最適な形を選びましょう。